一ノ谷博士のIT四方山話

元パソコンサポーターです。IT関連のテーマを中心に書きます。

海底軍艦

 海底軍艦 1963年公開 監督本多猪四郎
 
海底軍艦 轟天号は太平洋戦争末期に日本海軍が設計したものらしい。

この兵器が完成すれば戦局を一気に好転させることができると考えられていたようだ。
しかし、相変わらず、大艦巨砲主義から抜け出すことには成功していない。
 
いかに万能原子戦艦といわれても雨あられとやってくるだろう対艦ミサイルの前にはなすすべもないと思うのだがみもふたもないのでこの話はやめよう。
轟天号のサイズなどはウィキペディアによれば、全長150m、重量1万トン、空中速度マッハ2、水上速度80ノット、水中速度50ノット、地中速度時速20キロ、地上速度時速300キロということである。
地上速度というのは何だろう。轟天号が地上を走行しているシーンは映画には出てこない。
映像的にかっこいいとは思えないが一度みてみたいものである。
 
動力源は万能原子戦艦と言うぐらいだから原子力だと思うがそんな話題は映画にはでてこない。
武装 艦首ドリル、主砲 冷線砲(マイナス273度の光を放って、相手を凍結させてしまう兵器である。実に画期的な兵器だがどういう仕組みだろう)、副砲 3連装電子砲(よくわからんが電子ビームを放つらしい)、帯艦電撃(轟天号にからみついた怪獣マンダを退治するのに使われた)
 
さて映画の話である。
突如として地上への侵攻を始めたムー帝国の末裔たち、これを迎え撃つ万能の海底軍艦
簡単に言えばこんな映画である。
 
この映画に登場するムー帝国人は要するに普通の人たちである。この人たちが地上に戻りたいと考え、かつ地上を支配したいと考えて、地上を攻撃し始める。
あまり今風の映画の発想ではない。
 
海底軍艦の原作が書かれたのは1900年ということだからやむをえないだろう。
21世紀の今では人類が人類に対して武力による支配を企むことは少なくとも映画では、はやらない。
今時の映画なら敵は地下からではなく宇宙からやってくることになっている。
 
物語は人が車で誘拐されるところから始まる。
誘拐犯は被害者とともに車ごと海へ飛び込む。
誘拐された男は土木技師で、落盤対策が専門。
似たような事件が同時期に各地で発生している。
また、海軍の元将校だったらしい人物をムー大陸工作員を名乗る人物が誘拐しようとする。
 
映画なので伏線が多くて登場人物が何者なのか理解するだけで大変である。
この時点では伊号第四〇三潜水艦という船の名前が印象に残る。
ちなみに伊号四〇二潜までは実在した。
 
この物語の中で重要な役目を持つこの船の艦長は神宮寺大佐である。
 
ムー大陸は一万八千年前に太平洋に没した大陸らしい。
ムー大陸工作員を名乗る男が警察にフィルムを送りつけてきた。
その中に出てくるムー帝国の地下ドームに四〇三号潜が安置されていた。
この船がムー大陸の手に落ちたときには乗組員は誰も乗っていなかった。
 
工作員は艦長の神宮寺大佐が乗組員を指揮して、海底軍艦を開発しているという。
その開発を中止して、地上の人間はムー大陸の皇帝陛下に忠誠を誓えと言うのである。
事態をきちんと認識できていない世界は当然ながら、この要求をまともなものと考えなかった。
 
地上世界に対して、ムー帝国は世界の海運に打撃を与え始める。
いわゆる通商破壊であり、ドイツのUボートがやったのと同じようなものだ。
世界中の海軍はこれに対抗できなかったらしく、世界はムー帝国が開発停止を要求する海底軍艦に期待するようになる。
 
やむを得ないことだがムー帝国の戦略は稚拙なものである。
世界を支配できるかもしれない科学力を持っているのにわざわざ対抗できるかもしれない存在を世界に知らしめるのである。
この時点では不意打ちによって殆ど抵抗されずに世界を手に入れることができたはずである。
特にこの時点では海底軍艦は完成しておらず試運転も行っていなかったのである。
その上、神宮寺大佐はこの時点では海底軍艦は日本帝国再興のために使用することのみを考えていた。
 
この物語では神宮寺大佐は秘密裏に海底軍艦を開発しているがこれは現実には極めて難しい。
建造を行っている島はかなり大きいものであるらしく、映画には登場しないが原住民もいるらしい。
この物語では太平洋戦争が終わってからそんなに時間がたっていない。
太平洋の人が住めそうな島は米軍がすべて調べ上げたはずであり、無人島も調査したはずである。
 
また、海底軍艦のような大型の船を建造するには大量の資材が必要である。
ある程度の大きさを持つ島に、工場を造る。
例え地下に作るにしても資材と建設機械が必要である。
船の出入りが必要なはずで秘密を維持するのはとても不可能である。
軍艦であるから当然武器を必要とするが一から開発するわけにはいかないだろうし、必要な資金はどこから調達したのだろう。
登場人物たちも島が大きいことに驚いていたが小さな島で海底軍艦が開発できるはずがない。
 
などといいつつ、海底軍艦は試験航海にスタートする。
この後、地上世界とムーの戦闘が開始される。
気の毒で書く気がしないのだが緒戦で勝利を収めたムーはその後、登場する海底軍艦に歯が立たないのである。
もう少しマンダにはがんばって欲しかった。
しかたがない。
冷凍光線のような非常識な兵器には対抗できなかったのだろう。
 
最後に海底軍艦ムー帝国の動力室に侵入する。
しかし、上層部は我々より劣った民族が侵入できるはずがないといって、応援を派遣しなかった。
こうしてあえなくムー帝国は滅ぶ。
これで物語は終わる。
 
思うのである。
私が執政官であったならもう少しましなやり方で地上を征服したであろう。
もちろん支配を長く維持することは不可能だとは思う。
まぁ、100年、帝国が栄えることができれば上等というものだ。
 
ムー帝国が滅びた後、地上に平和が訪れたかというともちろんそんなことはたぶんない。
日本は無敵の兵器を所有したと解釈され、世界各国から海底軍艦の解体を要求されるだろうし、他の国はもちろん同じような兵器を開発しようとするだろう。
いずれにしろ、強力な武器など持つとろくなことにはならないのが人の世界である。